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 不思議そうな顔をした島村は、ホルダーからヒートスティックを抜き、ホルダーを充電器に突っ込んだ。加熱式煙草のそういうところがいちいち面倒臭そうだと思うのだが、ガジェット好きの島村はその手順も楽しいらしい。 「親しそうに見えたけど」 「……だってお前さっき」 「いや、だからそれは、何て言えばいいかな──そりゃ原田といるときとは違うけど、別によそよそしくしてたよなって意味じゃなくて」  言葉を探すように宙に視線を彷徨わせ、チキン南蛮と書かれた短冊の上で視線を固定すると、島村は店員呼び出しボタンを押した。 「なんだよ! なんか考えてるかと思ったらメニューか!」 「や、考えてたよ!? あっ、すみません」  登場した店員にチキン南蛮を注文した島村は再度ししとうを取り上げた。 「うまく言えねえんだもん」  島村は串を上下に振りながら「なんてーのかなあー」と間延びした声で言った。串の先のししとうがゆらゆら揺れて、催眠術でもかけようとしているのではと疑いたくなった。 「向こうが女だったら、てかデカかったから無理だけど、もしそうだったらアレだ、お似合いだぜっていうとこだな。原田とお前見ててもそんなん思わねえし」 「──意味がわかんねえ」 「俺も」  うははと笑った島村はししとうを口に突っ込み、チキン南蛮が運ばれてきたのでビールのお代わりを頼んで何だか分からないけどまた乾杯し、話は別の友人の話題に移り、仕事の愚痴を垂れ流して時間は過ぎた。  馬鹿話をして笑っている間は他のことは忘れていたが、それでもやっぱり頭の隅っこで、島村の言ったことが気になっていた。  男と女だったらお似合いだ?  だから一体なんだってんだよ。俺も井川も女じゃない。  苛立ちを腹の底に無理矢理押し込め、和伊は新しい煙草を銜えて火を点けた。
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