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プロローグ
初めて少年の柔肌に噛みついた時、罪悪感に押し潰されそうになった。
心とは裏腹に朦朧としていた意識は次第に明瞭になり、身体は脳からの伝達をはっきりと受け取れるようになった。
口のなかに溢れる暖かい鉄分を夢中になって喉が体内に押し流していく。
押さえつけた少年の身体は震えていた。少年の爪が腕に刺さる。
心の痛み比べたら腕に受ける痛みは小さなものだった。
ふと少年の瞳が目に入った。美しい瞳だった。
琥珀色の鋭い眼光は震えて声の出せない口の代わりをはたしていた。
明らかな敵意を剥き出しに睨みつけられている。
理性の糸を手繰り寄せて少年の首筋から牙を離すと彼の爪先も腕から離れた。
引き寄せ押さえ付けた肢体の重量が増し、俺に凭れ掛かってくる。
鋭い眼光はうつろになり、首筋から鮮血が垂れ白いシャツを染めあげた。
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