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急いで少年の首筋を舐めた。
俺たちの唾液には治癒力がある。傷はふさがり血も止まるはずだ。
舌に付着した血液がこの世の何よりも味わい深いなどと知りたくはなかった。
顔面蒼白とはよく言うがこれこそがそうだろう。少年の顔は真っ青だ。
もしこれ以上血を吸い続けていたら彼はどうなってしまったいたのだろう。
考え出したら背筋が凍るようだった。罪のない人間を殺めてまで生き長らえる価値など己にはない。
自分の指先が震えているのに気づいた。
これまで生きた人間の血液を口にすることは固く拒否していた。倫理観に反するからだ。
人間の姿形は我々と同じであり、望めば我々にもなりうる存在なのだ。
そして彼らは臆病。臆病であるがゆえに強い。
怖がらせ、武器を取らせればいくら不老不死と呼ばれる俺たちの存在であっても、簡単に消すことができる。
これまで死人の血で生きてきた。人間と同じ。
彼らが生きるために肉を喰らうのと同じように、俺は生きるために死人の血を飲んだ。
どれもお世辞にも美味しいとは言えなかった。
心臓が止まったあとの血液はどんどん鮮度を失っていく。
これまでそんなものしか口にしてこなかった。
だから少年のシャツに染み込んだ血液が香り立つように吸血意欲を刺激する。
指先に、幽かな少年の息がかかった。震える唇は明確な敵意を持って「殺してやる」と吐き出した。
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