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ルイス
人里離れた森の中にひっそりと住まいを持ってもう100年は経つ。
窓から見えるのは薄暗い闇と太く聳え立つ木々の幹だけ。
季節が巡れば緑が見えるが、今は寒さに耐える灰色ばがりだ。
コンコン、と玄関の扉が音を立てた。
──そうか、今日は配達日だ。
俺の返事を聞く前に扉は開いた。
「やあ、ルイス」
そう言って顔を覗かせたのは清潔な雰囲気を持つ青年だ。
目深に被っていた帽子をとり、彼は慣れたように家に上がってくる。
片腕に持った無機質な箱のサイズはいつもより少し大きめだ。
「今日は何日分だ?」
「えーと、18日分かな」
「じゃあ25日後にまた頼む」
「だめだよルイス、君はそんなんだからいつも顔色が悪いんだ」
彼は言いながら、保管庫の扉を開けた。
ひんやりとした空気が室内に入り込む。それから、ほんの少しの生臭さ。
じわりと、唾液が口のなかで広がった。
そんな自分が腹立たしい。
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