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セスは小瓶を見やると、そのまま自分の口に傾けた。
どうやら1滴残っていたようで、それすら惜しいというように飲み込んだ。
「ルイス、どうしてそんなに我慢するんだ」
「……我慢じゃないんだ」
「もう何年もそんなじゃないか…」
人の生き血を吸ってしまってから、俺は死人の血液に旨さを感じなくなってしまった。
生きた人間に牙をたてたことのないセスにはきっとこの感覚は分からない。
味覚以外はこの赤い液体を欲しいているからと、期待して飲むととてもまずく感じるのだ。
「君、死なないでよ」
「大丈夫だよ」
セスは保管庫に戻ると、箱から取り出した小瓶を棚に並べ始めた。
青年のように見えるセスでも、俺より長く生きている。
俺たちの寿命は時に1000年を越える。
その間姿形は変わらず、人間のように老けていくことはない。
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