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きっと忘れない
「ハク……よく頑張ったね」
そう呟きながら、その名前の通り真っ白なハクの毛並みをそっと撫でる。
けれども、ハクはもう喉をゴロゴロと鳴らして甘えてくることもなければ、「ニャーン」というよりは「キューン」と聞こえる特有の可愛らしい声で返事をしてくれることもない。
先程まで確かにあった、ハクの温もりは急速に失われつつあった。
毛並みは相変わらずシルクのように滑らかで柔らかいのに、その向こう側にあったはずの命の熱量は、もう感じられない。
――白猫のハクが、二十年という長い長い生涯を閉じたのは、つい先ほどのことだった。
息を漏らすように「キュゥ」と長く鳴いたきり、ハクの呼吸は止まってしまった。弱々しく開かれた眼からは急速に光が失われていき……その体は急速に冷めていったのだ。
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