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そんな娘の愛を常に頭に乗せ生きてきた私だったが、やがて衰え、寝たきりとなり、ヘアースタイルを気にする必要がなくなった。
そう。すでに死滅した毛根達の後を追うように、私の命は尽きようとしていたのだ。
病室の計器音が鳴る中、ぼやけた視界にうっすらと映る妻と沙来紗の顔。
その後ろには沙来紗の夫と孫がいる。二人とも奇抜な髪型をしている。どちらも私が被っていたカツラだ。
「お父さん……今日、誕生日だよね」
沙来紗が私の頭にそっと何かを被せると、優しいぬくもりに包まれた。
それは雲のように真っ白で、綿のようにフワフワとしたカツラだった。
「フフ……お父さん、まるで神様になったみたい」
「そうね……なんて幸せそうな顔をした神様なのかしら」
こうして私は最後の最後までぬくもりを感じたまま一生を終えることができた。
沙来紗、ありがとう。
私の、愛しの、髪様……。
おしまい
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