なケなしのはなし

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 そして沙来紗が20歳の時、とうとう毛髪メーカーで取り扱われている本物のカツラが私の頭に乗っかった。 「た、高かったろう……」 「まあね。頑張ってバイトしたから。今までちゃんとしたのあげられなくてゴメンね」  感激した私はカツラを本格的に使用することにした。当時50の大台に突入し、すっかり荒野と化していた頭にカツラはジャストフィットした。  突然フサフサになった私の頭に会社の連中は始めこそざわめいていたが、娘がプレゼントしてくれた物だと説明すると皆納得してくれた。これでこれからは堂々と着用できる。  大学を出た沙来紗は某有名毛髪メーカーに就職した。私のように薄毛で悩む人々に手を……いや毛を差し伸べて救いたいのだそうだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加