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あたし、比良坂桃は六年前事故に遭い、六年間こん睡状態だった。
その影響なのか、目が覚めた時成長が事故当時の六歳で止まっていた。
事故の際両親を亡くし、引き取ってくれたのは本家のお兄ちゃん四人。陰陽師という特殊な家業のため、小さい頃から跡取りと年の近い分家の子を一緒に育てる風習があるとかで、そのうち三人は分家の子だ。跡取りの両親祖父母はすでに亡く、当主となり、四人で暮らしてたらしい。
ていうかどれもイケメンて、どこの逆ハーレムものだとつっこみたくなる。
そんなある日、当主で長兄の士朗お兄ちゃんが言った。
「桃もこのゲーム……じゃなかった、トレーニングだいぶ慣れたし、次のレベルに行こうか」
今はっきりゲームって言ったな。
兄が指すのは「楽に陰陽師の基礎を学べるソフト」と言い張る特製テレビゲームである。こんなん作る脳みそあるなら他に使ったほうがいいと思う。
と考えつつ寝ぐせのついた怠け者の長兄を見る。
「これで身につくのは基礎的知識とお札の書き方初歩だけ。お札はあとは普段から書いて練習するんだな。で、レベル2は実際に体を動かして術を発動する方法」
じゃじゃーん!
出てきたのは、ゲーセンにありそうなダンスゲーム筐体。あの大きいやつ。
「…………。……なにこれ……」
やっぱゲームなんかい!
脱力するしかない。
「ダンス・リズムゲームの形で学べるぞ。ほら、曲の振り付けみたいなもんだ。今時のアイドルの曲ってたいていダンスとセットだろ」
「そうだけどそういう問題じゃないよ?!」
「翠生が座学は得意だけど運動からっきしでさ。ゲームならとっかかりやすいし、歌の振り付けと思えば楽しいだろ? 有名曲入力しよか」
ごめんこれやってる翠生お兄ちゃん想像しただけで泣けてくる。
真面目な堅物眼鏡の兄を思い、涙した。
つかカラオケの入力機っぽいんだけど手に持ってんの。
「術の発動に必要な動作を振りつけとして組み込んであるんだよ。前の画面に表示される見本通りに動けばいい。手の動きも大事だからな。ちゃんと認証するようになってる」
無駄なハイテク。
「俺がいっぺん見本見せてやる」
「は? ちょ……」
選曲もできるらしく、士朗お兄ちゃんが選んだのは流行りのビジュアル系バンドの曲。学校で毎日一人は歌ってるくらい売れてるやつだ。
『Start!』
うわ、ちょ、マジで? 士朗お兄ちゃんすごいキレッキレ。若っ。
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