第二章

2/5
前へ
/10ページ
次へ
「高くつくなオイ……」  ぶつくさ言いつつ、素手で靴つかんで床に置く士朗お兄ちゃん。このトレーニングルームは除霊にも使う特別室で、部屋そのものに結界を組みこんである。安全だ。  現れた怨霊は確かに美人だった。主演女優なの納得。  でも蒼太お兄ちゃんのほうが美人に見える。なぜ。  その蒼太お兄ちゃんは腰に手を当て、宣戦布告した。 「さあ! アタシとダンス勝負よ!」 「……なんで?」  出鼻どころか色んなものくじかれまくった怨霊は素でポカーンとして答えた。  ごもっとも。 「使うのはこのマシン。ゲーセンでよくあるダンスゲームよ、知らない? 家庭用ゲームソフトにもなってる有名タイトルだし知ってるわよね」 「……いや。いやいやいや、そうじゃなくてちょっと待ちなさいよ」  さらにごもっともなツッコミが入るが、蒼太お兄ちゃんは聞いてない。 「あら、ダンス上手いからダンサー役当然だって自慢してたんじゃなかった? 本物のダンス得意なら、ゲームのダンスくらい余裕よねぇ」 「ももちろんよ! 簡単に決まってるでしょ?!」  あー、コレ扱いやすいタイプだ。あっさり見え見えの挑発に引っかかった。  しかもまぁ、自分より美人の性別不詳の人に言われりゃ、引き下がれないよねー。  はいっ、というわけで始まりましたー、ダンス対決!(実況アナウンサー風に)  ウオオオオオオ。ヒューヒュー。いつの間に集まったのか、オーディエンス(式神)が歓声あげてますが除霊です。目的のための手段がおかしい気が非常にするけど。  下の兄二人も来てる。脳筋の紅介お兄ちゃんは単純に面白がってて、真面目な堅物翠生お兄ちゃんは「何だコレ……」って顔してる。あたしは翠生お兄ちゃんに全面的に同意したい。  レベル2の修行するはずが、何をどうしてこうなった。  マシンが二つ並べられ、対戦形式に設定される。つーか二つもあったのか。 「曲何にしようかしらー。あ、新曲入ってるじゃない。やったことないわ」 「それ、それにするわ!」  まぁそりゃそうだ。どっちも初見じゃないと不公平。 「難易度は? 簡単、普通、難しい、鬼むずモードがあるわよ」 「一番難しいやつに決まってるでしょ!」  見栄っ張りらしく、怨霊は一度もやったことないのに最高難易度を選択した。あーあ、自滅フラグ立った。 『Game start!』
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加