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「高くつくなオイ……」
ぶつくさ言いつつ、素手で靴つかんで床に置く士朗お兄ちゃん。このトレーニングルームは除霊にも使う特別室で、部屋そのものに結界を組みこんである。安全だ。
現れた怨霊は確かに美人だった。主演女優なの納得。
でも蒼太お兄ちゃんのほうが美人に見える。なぜ。
その蒼太お兄ちゃんは腰に手を当て、宣戦布告した。
「さあ! アタシとダンス勝負よ!」
「……なんで?」
出鼻どころか色んなものくじかれまくった怨霊は素でポカーンとして答えた。
ごもっとも。
「使うのはこのマシン。ゲーセンでよくあるダンスゲームよ、知らない? 家庭用ゲームソフトにもなってる有名タイトルだし知ってるわよね」
「……いや。いやいやいや、そうじゃなくてちょっと待ちなさいよ」
さらにごもっともなツッコミが入るが、蒼太お兄ちゃんは聞いてない。
「あら、ダンス上手いからダンサー役当然だって自慢してたんじゃなかった? 本物のダンス得意なら、ゲームのダンスくらい余裕よねぇ」
「ももちろんよ! 簡単に決まってるでしょ?!」
あー、コレ扱いやすいタイプだ。あっさり見え見えの挑発に引っかかった。
しかもまぁ、自分より美人の性別不詳の人に言われりゃ、引き下がれないよねー。
はいっ、というわけで始まりましたー、ダンス対決!(実況アナウンサー風に)
ウオオオオオオ。ヒューヒュー。いつの間に集まったのか、オーディエンス(式神)が歓声あげてますが除霊です。目的のための手段がおかしい気が非常にするけど。
下の兄二人も来てる。脳筋の紅介お兄ちゃんは単純に面白がってて、真面目な堅物翠生お兄ちゃんは「何だコレ……」って顔してる。あたしは翠生お兄ちゃんに全面的に同意したい。
レベル2の修行するはずが、何をどうしてこうなった。
マシンが二つ並べられ、対戦形式に設定される。つーか二つもあったのか。
「曲何にしようかしらー。あ、新曲入ってるじゃない。やったことないわ」
「それ、それにするわ!」
まぁそりゃそうだ。どっちも初見じゃないと不公平。
「難易度は? 簡単、普通、難しい、鬼むずモードがあるわよ」
「一番難しいやつに決まってるでしょ!」
見栄っ張りらしく、怨霊は一度もやったことないのに最高難易度を選択した。あーあ、自滅フラグ立った。
『Game start!』
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