第二章

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 蒼太お兄ちゃんは始めのうちこそぎこちなかったものの、すぐ動きがスムーズになった。  順応早っ!  ううむ、すごい。思わず見とれてしまう。  軽やかなステップ、しなやかで優雅な動作。本職のダンサー顔負けな技術だ。バレエとか日舞でも習ってたのかな。素人でもレベルが違うと分かる。 中性的な美貌が何とも言えない美しさを醸し出し、まるで巫女が神に舞いを捧げているかのような神秘さすら漂わせる。  舞い……そうだ、まさに神事における巫女の舞いだ。  その一方で怨霊のほうは、全っ然駄目。完全に圧倒されちゃって、ミスしまくってる。焦りすぎてさらに失敗を誘発。  気の毒に。ケンカ売った相手が悪すぎた。バットちょっとは握ったことある程度の素人がプロ野球選手に勝負挑むみたいなもんだよ。  しかもこれはただのゲームじゃなく除霊。ちゃんとステップ刻めば術が発動し、もう一方のプレイヤーにダメージを与える。 『30コンボ!』  怨霊はダメージであきらかに顔色が悪くなり、もっとミスを連発する。 『50コンボ……60コンボ……』  怨霊の姿がどんどん小さくなっていく。  うーん、こんなふざけた方法で祓われて気の毒に。 『フルコンボ! パーフェクト!』 「ま、こんなもんね」  ワアアアアアアア(歓声)。  蒼太お兄ちゃんは優雅に髪をかき上げた。汗一つかいてない。そんな動作も美しい。  敗れ去った怨霊は消え、靴だけが残ってた。  合掌。 「蒼太お兄ちゃん上手いねぇ」 「当然よ。踊りと歌はアタシの得意分野だもの。アタシはアメノウズメの力の一部をもらったもの」 「え」  アメノウズメ。  誰?って人は古事記を読んでみよう。え、簡単に説明しろって?  天岩戸作戦の時に登場した女神よ。弟スサノオのいたずらに耐えかねて閉じこもった天照大神を外に出すため、すぐ前に作られたパーティー会場でダンスして盛り上げた。 「ああ、それでダンス得意! なるほどー。……って、あれ? 蒼太お兄ちゃん男性なのに女神を憑依させたってこと?」  士朗お兄ちゃんが靴を箱にしまいながら答える。 「一族で俺の同世代の子供はみんな男だったんだ。桃は当時実年齢六歳だし、いくらなんでも幼児に神降ろしは命の危険がな」 「いやさ、男神にすればよかったんじゃ?」
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