第二章

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「アメノウズメは天岩戸作戦メンバーで、天孫の乳母でもあったからでしょ。予言の『来るべき災厄』に備えるって名目の、その実ライバルに勝つための戦力増強策なんだから強力な神ばっか選んだのよ。ま、アタシは元からこんなんだしねー」  ……え?  あたしはちょっと考え込んだ。 「蒼太お兄ちゃん、性同一性障害?」 「さあ? アタシにもよく分からないわ。男の部分も女の部分もある……しいて言えば『両方』ってとこかしらね」 「両方」 「そ。『男か女か』じゃなく、『どっちでもある』。現に女神の力のせいか、今じゃ両性具有だし?」 「は?!」  ものっそい衝撃事実キタ。  ちょ……え……ええええええええ?!  そりゃ中性的だとは思ってたけど! ついまじまじと頭から足まで視線を巡らせてしまった。 「あはは、桃ちゃん来てからは混乱防ぐため元々の男性体にしてるからねー。でも男にしては華奢でしょ?」 「うん、線細い」 「普段は気分によって男性体・女性体変えてるのよ。それもいいと思わない? 男なのか女なのかじゃーなくて、今は男の気分だから男にしよう、今は女の気分だから女にしようってのでも。どっちかじゃなきゃ駄目ってわけじゃないでしょ。もっと自由に考えてもいいじゃない?」 「はあ……」  最先端いってるなぁ。  今はLGBTに理解ある人が増えてるとはいえ、少し前までならかなりあれこれ人から言われただろう。  もしかしたら蒼太お兄ちゃんの親は理解がなく、これが原因でまだ幼い我が子をあっさり手放し、本家に追いやったのかもしれない。 「これで桃ちゃんにも説明できたし、これからはまた家の中でも好きな性のほうで暮らしていいわよねー。今度女性体で一緒に買い物行きましょ。姉妹デート♪」 「……えーと、お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんって呼んだ方がいい?」 「どっちでもいいわよ。言ったでしょ、アタシは『どっちでもある』の」 「男性体の時は兄、女性体の時は姉、って呼んだらどうだ」 「士朗もアタシのこと妹って思っていいのよ」 「冗談言うなっ!」  本気で嫌がる士朗お兄ちゃんに、ケラケラ笑う蒼太お兄ちゃん。 「そだね、士朗お兄ちゃんと蒼太お兄ちゃんって兄弟っていうか夫婦みたい……」 「やめろ桃!」 「あっはっは、ないわー。コイツはアタシにとって息子みたいなものよ。アタシのほうが誕生日後だけど」
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