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「ああ、そうも見える。オカンと息子」
「でしょ? まったくどうしようもない子でねぇ」
と言いつつ蒼太お兄ちゃんは女性体になってみせた。
まつ毛が長くなり、喉のラインもシャープに。しかもボンキュッボンのナイスばでぇー(古い)。
一気に妖艶さが増し、何かいい香りまでする。式神たちも軒並み頬染めてポーっとなってる。絶世の美女、傾国の美姫ってこういうのをいうんだろうな。
効いてないのは兄たちだけだ。
「Wao……」
なぜか英語。
「すごい……あたし、大人になってもこんな美女には絶対なれない……負けたとかいうレベル通り越した」
「あらぁ? そんなことないわよー」
「無理無理無理無理」
「桃ちゃんならアタシより美人になるわよ。だって……」
「蒼太」
士朗お兄ちゃんが鋭く遮った。すばやくアイコンタクトがされる。
……?
「ふーん。ねえ、桃ちゃん、コイツになんで彼女いないのか気にならない?」
「仕事しないサボりまくりのダラケ人間だからでしょ」
「そうね、それもあるわね。でも一番の理由はお嫁さんが半ば決まってるからよ」
「……あ、家の関係で? 同業者のすごい人が許嫁ってこと? あたしが知ってる同業者って綺子ちゃんとこだけだなぁ。まさか綺子ちゃん?」
「それは違う」×4
そろって否定された。だよね。
「他のとこよ。正式に決まってるってわけじゃないんだけどー、暗黙の了解っていうかー」
「蒼太」
さっきより強い口調で士朗お兄ちゃんが睨む。思わずびっくりするくらいの眼光。
でも蒼太お兄……お姉ちゃんは平然としてた。
「俺は承知したとは言ってない」
「ハイハイ。……いつまでそう言ってられるかしらね」
蒼太お姉ちゃんは意味深な笑みを浮かべた。その微笑み一つで国が落とせるだろう。
「いつまでも言い続けるさ。桃、そろそろおやつの時間だな。行こう」
「え、あ、うん」
露骨に話題そらされたと気づいたけど、あたしは何も言わないことにした。
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