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第三章
桃と士朗が出て行ったあと、翠生が蒼太に問う。
「どういうつもりですか、あなたは」
蒼太は優雅に肩をすくめる。
「やーねぇ、ハナから全部バラすつもりはないわよぅ。ただちょっと士朗にハッパかけただーけ」
「分かるけどさ。常識的に考えて無理じゃね? 見た目と世間的な視線で思考にブレーキかかるだろうよ。ロリコンならともかく」
紅介が頬をかく。
「あの子の実年齢は12。実際の年の差は一回り程度でしょ」
そう……『あの子』が指しているのは桃―――義妹本人だった。
「妻になる子だから、天涯孤独になったと知ってうちで引き取ったんじゃない。あの子は本当は比良坂家と縁もゆかりもないのにね? わざわざ遠縁だなんて嘘ついてまで」
「士朗さんは桃さんのご両親の死に責任があると考え、引き取ったつもりですよ」
「その理由もあるでしょうね。けど、ほんとにそれだけかしら?」
「現状でそうだったら紛れもないロリコンですよ……」
それは通報したほうがいいんじゃないかと悩む翠生。
「今はね。大人になればただの年の差夫婦。そんなの世の中にいくらでもあるでしょ。大人になって他の男にかっさらわれる前に捕まえとけってことよ。もし桃ちゃんが下手な男と結婚されたら困るのは事実でしょう」
「……ええ」
「ね? だから紫の上計画よ! 光源氏が若紫を育てたように、理想の女性育成しちゃえばいいのよー!」
弟二人は何とも言えない目を兄兼姉に向けた。
「あら、アンタたちも男なら理解できるはずよ。好きな子を自分好みに育てたいって感覚」
「理解できるけどよ……」
「色々問題ある発言では……」
「アタシは男でも女でもある存在。アタシが言うならそんなに角が立たないわ。それにアタシたちは神の力のせいでとっくに成長が止まってる。すでに人間ではなく、年齢など無意味でしょ」
士朗はじめ四人とも、止まった時期に個人差はあるが、一定の所で肉体の時間が停止している。そのため実年齢と一致せず、『年齢不詳』に見えることとなった。
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