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「紗和ー、もう練習始めるよー?」
ドラムの梨華が話しかけるが、紗和はスマホを握りしめたまま顔を下に向け動かない。キーボードの雅美がニヤリと眼鏡を曇らせながら、
「まあまあ、もう少し待ってあげましょ。紗和ちゃんもお年頃なのよ。」
とおばさんっぽく言った。
「・・・・はあ。」
紗和の口からため息1つ。顔は真っ赤に染まっていた。
(・・・凛、早く帰ってこないかな?)
顔をあげてハッとした。紗和の顔を梨華と雅美が楽しそうに覗き混んでいる。紗和は慌てて顔を反らした。
「れ、練習始めようか!」
「いいのー?もう少し余韻に浸っていてもいいんだよー?」
「そうそう!紗和のあんな顔なかなか見れないんだから!」
からかう2人に紗和は、
「練習!明日もライブなんだから!」
と声を上げた。
「それと!凛には言わないように!」
この一言に2人は嬉しそうに、はーいと返事をする。気持ちを切り替えて、紗和も愛用のギターを手に、ステージへ上がった。歌い始める。
(凛にも聞こえますように。)
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