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目が覚めると、全員が驚くほど小さな匣に納められ、お坊さんらしきおじさんが静かにお経のような念仏のような、よく聞き取れないが心地よいリズムでなにかを唱えていた。
薄らと目を開いているつもりだったが、見えるものはほとんどなく真っ白な靄のなかにいるようだった。不思議なことに部屋の中にある貴金属、とくに色の黒いものはその位置がよくわかった。そのため仏具がやけに目に入り、ここが寺だということは認識できた。
身体を動かしてみようと思っても、身体があるのか、ないのか自分でもわからず、小さな匣の中にみっちりと納められている感覚だけがあった。
お経のようなものが部屋全体を満たし、味わったことのない温かさに包まれた。
僕たちはそのリズムに合わせ、眠るように再び目を閉じた。
何故かはわからないが、お経によって救われたような安心感を得て、ゆっくり、そして静かに真っ暗などこまでも底の見えない大きな穴へと堕ちていった。
堕ちてゆく間、あの3人の子供たちは大丈夫なのだろうか、1年生たちは無事なのだろうか、先生はどうなったのだろう、と不思議な心配をした。
心配をする僕たちをお経らしきものが優しく包み込み、自分がなにを心配していたのかすら忘れてしまった。自分が何者かもわからなくなり、なぜここにいるのかもどうでもよく感じた。
このままどこまでも堕ちながら、心地のよい真っ暗な世界を浮遊していたいと思った。
記憶にはないが、お母さんのお腹の中にいたころは、きっとこんな感じだったのだろうと思いながら、意識が静かに薄れていくのをなんの抵抗もなく素直に受け入れていた。
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