アブラトリ

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周りを見回したが人の気配はなく、ただただ川の流れる音が頭の中をいっぱいにした。その間も先生は「イヒイヒイヒ」と笑いながら途中で何度も転び、それでも僕たちを追いかけまわした。 「どうする……? 警察を呼んだほうがいいんじゃね……?」 「でも……警察沙汰になったら、先生が困るんじゃね……?」 「そうだよな……。じゃあ、俺たちで取り押さえて、あとは学校の誰かに来てもらおうか……?」 「そうだよな……それが一番手っ取り早いんじゃないかな……」 そう言うと、僕たちはぎこちなく誰かを追いかけて走り回る先生を見た。 ちょうど1年生が2人、順番に追いかけられていたが、2人とも先生をあしらうように急に方向転換をしたり、突然高いところに飛び乗ったりと先生と鬼ごっこをして遊んでいるようにも見えた。 「じゃあ、俺……学校に電話するよ……」 「おう…じゃあ、その間に俺らは先生を捕まえちゃおうか……」 「よろしく頼むわ……」 僕と幼馴染2人の3人で先生を捕まえることになり、1年生たちにこっちに来るように言った。気が付けばさっきまで凍えそうなほど寒かったのに、全員が軽く汗をかくほど身体が温かくなっていた。 1年生たちが先生を誘導するように、こっちに向かって走ってきた。僕たちは取り敢えず先生の脚を掛けて倒して、鉄の棒を取り上げる準備した。 「じゃあ、俺が先生の脚を掛けて倒すから、2人はすぐに先生が持ってる棒を取り上げて」 「わかった!」 こっちに向かってくる1年生たちの楽しそうな顔を見ながら、先生の脚を引っ掛けるタイミングを静かに待った。
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