囚われました

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涙を拭った親指が そのまま唇をなぞる 「柚にキスしたい」 椅子から立ち上がると 顎を引き上げられ フワリと唇が重なった 「不安にさせたお詫び」 どこまでも甘い声に 笑顔を作ると 頭をポンポンと撫でてくれた 大きな手が“大丈夫”って言ってくれているようで 不思議と安心する 「さぁ、行こうか」 腰に回された手に驚いて顔を見上げると 「離れたくない」 ストレートな声が降ってくる 隙間を埋めるように密着する彼に 身体を預けながら エレベーターに乗り込む チン 「?」 地上に降り立つと思っていたのに 最上階のレストランから 僅かに降りただけのフロアを進む   「今夜は此処で泊まりね」 いつの間にか手にしているカードキーで 開かれた扉の中は ・・・素敵 さっきまで居たレストランと 同じように光る夜景が広がる空間 「綺麗」 「柚」   「キャッ」 身体が宙に浮いて 見えたのは至近距離の彼の顔   「しっかり掴まってて」 大きなソファを避けながら 部屋の奥にあるベッドへ降ろされた 「柚が欲しい」 間近で見る彼の目が 獰猛な光を孕んで妖艶に映る さっきとは打って変わり 強引に合わせられた唇は どちらも熱を帯びて濡れている 合わせるごとに深くなる口付けに 身体の奥に火が灯り始めた 「ん・・・んっ」
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