人間嫌いな怪物《モンスター》学者

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 生暖かい空気がたちこめる薄暗い室内には、背丈よりも高い棚が所狭しと置かれ、その棚には大小様々な檻が置かれていた。中には得体の知れない生き物達がおり、二人が入室した段階でそれらはソワソワと動き出す。  檻の中を高速で走り回るモノ、奇声をひたすら上げるモノ、妙な臭いを発し続けるモノ、鋭い視線を送って毛を逆立てるモノ、いろいろな生物が思い思いのスタイルで二人を出迎える。そんな檻に触れないよう身体を細めながら、クレイとダイアン(マリー)は部屋の奥へと突き進んだ。 「あれ……」 「どうした? クレイ」  棚と棚との間をやっと抜け出た先には、更に同じような棚が二人の行く手を阻んだ。 「この先には確か、彼の研究机があったはずなんですが……もしかしてこの部屋、模様替えしたのかな?」  そう呟くと、棚の向こう側から「その通りだ、つい昨日ね」という声が聞こえた。 「パフィ? そこにいるのかい?」 「あぁ」 「今日は先日話した通り、君に会わせたい人を連れて来たんだ」 「ボクは会いたくない」  あまりの即答に、二人は顔を見合わせる。 「君が見知らぬ奴らを紹介したいと言うから、棚の配置を変えた。君達がボクの所まで来れないようにね」  クレイは額を抑えながら溜息をついた。なるほど…と、ダイアン(マリー)は顎に生えた髭をジョリジョリと摩る。 「この棚の向こうに居るのが僕の同僚、モンスター学者のパフィオペ=ディルムです。彼はこの通りちょっと……というか大分、“人間嫌い”なところがありまして……。僕とまともに話すようになったのも、同じ研究員としてここで働くようになってから、5年の歳月を要しました」  そう説明したクレイの眉は、完全にハの字を作っている。 (「会えばわかる」と言った問題とやらはコレか)  行く手を阻む棚には、いかにも気の荒そうなモンスターの入った檻が並べられていて、それはパフィが人間をどの程度拒んでいるのかが容易に窺えた。一筋縄では彼から情報を訊き出せそうにない。 「先日も説明したじゃないか。これはパフィにとってもいい出会いになるよって」 「ボクは出会いなんか求めてないし、クレイに頼んだ覚えもない」 「それはそうだけど……モンスター研究は今、経費を削られて困ってるんだろう?」 「……」  二人の会話に糸口を感じたダイアン(マリー)は、「どういうことだ?」と訊き返す。
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