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「パフィのモンスター研究はここ近年、研究費が削られ続けているんです。それでこの部屋のモンスター達の餌代が研究費で賄えなくなって、パフィは自腹で餌代を払い始めましたが、それもとうとう足りなくなってきたそうで……」
「ほう」
「だから僕が提案したんです。一部のモンスターの餌をダイアンさん達に調達して貰ったらどうか? って」
「なるほど。その対価にわしらは例のモンスターの情報を貰う……今回はそういう『クエスト』だな?」
「ええ」
ダイアンは「ふむ」と納得すると、一歩前へ踏み出して棚の向こう側へ話しかける。
「パフィとやら、わしはマ……ダイアンと言う。おぬしの情報を貰えるなら、モンスターの餌の件、協力してやっても良いぞ。この部屋で一番食費のかかるモンスターはどれだ?」
しかしまだ警戒しているのか、パフィの返答は聞こえてこない。
「パフィ、この人達は信用出来るよ。何せ僕が依頼した命懸けのクエストを、二度も同行してくれて二つ共達成してくれたんだ」
それでもまだ警戒しているのか一向に返事は無く、二人が諦めて踵を返そうとしたその時、ぼそりと小さな声で「ブーゲン…ビレア」という答えが返ってきた。ダイアンがその名を反復すると、クレイは「あぁそうだよな……あれが一番食費がかさむ」と、深刻な顔で腕組みをする。
「そのモンスターの餌は何だ?」
「ネズミ……とかでしょうか」
「何だ、ただのネズミか」
「いや、そんな簡単な話ではありませんよ。彼の育てたブーゲンビレアは相当な大食いなんです。ネズミも余程の数を用意しなくては……」
「何だと?」
思っていたより骨の折れるクエストになりそうだとこめかみを抑えるが、その肩にポンと手を置いたクレイは、
「大丈夫ですよ、ダイアンさん。僕にいい考えがあります。それに僕達には幸い、マリーさんがついてますしね!」
と、元気づけるように微笑んだ。彼の賢さには一目置いているが、
(この時点でまだわしだと気づいておらぬようだしな……。それにモンスターのわしでは魔法も使えぬというのに、どうにかなるものなのか?)
と、一抹の不安を募らせるのだった。
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