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クレイとダイアンが呆気にとられていると、二人の存在に全く気づいていない吸血猫は、その横を必死に通り過ぎようとした。
しかし店主の一人が「誰か捕まえてくれー! 謝礼は払う!!」と叫んだ瞬間、ジュリアがとっさに何かをブツブツと唱え、向けた手の平から吹雪のように冷たい風を放ち、吸血猫の身体を包み込む。吸血猫の体はみるみるうちに足元から凍り、その場に氷の塊が出来上がった。
「姉ちゃん、よく捕まえてくれたな!」
「法術師かい? 凄いじゃないか!」
「俺、生で法術見たの初めてだよ! 興奮しちまうな!?」
店主達が次々にジュリアを取り囲んで褒め讃えるので、彼女は照れながらポリポリと頭を掻く。
「謝礼は弾むよ。俺の店の商品でいいか?」
「なら、あたいの店の果実も一個サービスするよ」
「今日入った新鮮な魚、三匹やるぜ!」
彼女は「お金がいいんだけどな…」と思いながらも、謝礼を受け取りに行こうとするが…
「すみません! 待ってください!!」
と、突然クレイがその一行を呼び止め、続いてダイアンの、
「この氷を溶かしても良いか? こいつはわしらの連れでな」
という言葉で、その場は一瞬にして凍りついた。
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