7人が本棚に入れています
本棚に追加
「どんなに質が良くても、私の肩書が学生っていうだけで、この“法術ミトン”は百ゴールドにしかならないのよね…」
クレイからミトンを奪い取り、彼女はそれを苛立ち紛れに元のかごへと突っ込む。
「これがたったの百ゴールドですか!?」
「うん」
「金が欲しいのか?」
「そりゃまぁ……」
「もしかして君は…法術学校の生徒なのかい?」
「そうだけど?」
ほんの少しだけ思案すると、クレイはダイアンに「彼女にも手伝って貰いませんか?」と提案した。それを聞いた吸血猫は、慌ててクレイの脛の辺りへガリッと爪を立てる。
「痛っ!!」
「気にするな。こやつは氷漬けにされたのをまだ根に持っているだけだ。わしはその案に賛成する」
そう言ってダイアンは吸血猫の首根っこを掴み上げた。鋭い爪が虚しく宙を引っ掻く。
「何? 何の話?」
「ああ、すみません。実は僕達、今からある物を捕まえなきゃならないんですが、それを貴女に手伝って貰えないかと。お礼は弾みます」
「え!? お金くれるの!?」
「ええ」
クレイがニッコリ微笑むと、ジュリアは「ヤッター! やるやる!!」と言って飛び跳ねた。
「改めて、僕はクレイ=マチスと言います。そしてこちらが……」
「マ……ダイアンだ。そしてこやつがダ……マリー」
首根っこを掴まれたままの吸血猫が、更に激しく暴れ出した。今の紹介で、ダイアンが自分と入れ替わったのを、クレイに話していないのがハッキリしたからだ。
(おいっ! マリー!! どういうつもりだ!?)
抗議に対して、ダイアンの目は恐ろしく殺気を放っていたので、途端に吸血猫は大人しくなった。そんな彼らの様子に少し首を傾げる少女だったが、
「私はジュリア=プリムラ、ジュリアでいいよ!」
と、笑顔で握手を交わすのだった。
最初のコメントを投稿しよう!