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3rd Quest:モンスターの餌を確保せよ
クレイ達一行は、城の西側にある水路へとやってきていた。南北に真っ直ぐ伸びるその水路は、幅が五メートル深さは三メートル程あり、フラワードの街をぐるりと一周囲んでいることから、有事の際はこのフラウ国首都を守る堀の役目も担っている。
しかし水路の普段の水嵩は、大雨でも降らない限りくるぶしまでも無い。この水路には、城下町中に張り巡らされた下水道の水が流れ込んでいて、水路の東側側面には、等間隔で丸い下水口が突き出していた。
「あの下水口を見てください。今回はあそこを使おうと思ってます」
水路を暫く南下した場所にあるその下水口は、他のものより倍の直径一メートル程の大きさで、流れ出す水量も多い。この大きな下水口こそ、メインの下水道であった。
「作戦はこうです。ジュリアさんには法術を使って、一時的にこのメイン下水道以外の支流を塞いで貰います」
「どうやって?」
「凍化法術じゃな」
「そうです。凍化法術で支流の穴に蓋をしてもらいます。そしてマリーさんには…」
クレイは小脇に抱えていた地図を広げて、一点を指差す。その場所は、この下水口から真東にある、メイン下水道の始まりの場所であった。
「ここから、この下水口に向かって歩いて貰います」
「こやつは……歩くだけで良いのか?」
吸血猫の首根っこを掴み上げ、ダイアンは顔を覗き込む。吸血猫の顔は、未だに納得がいってないというような半分死んだような目をしている。
「ええ。恐らくこのメイン下水道のネズミ達は、マリーさんの姿を見ただけで、この下水口に向かって逃げてくるでしょう。そこで僕とダイアンさんが、下水口にこの袋を被せて、ネズミを一網打尽にする…というわけです」
そう言ってクレイは、麻で編まれた網目の荒い大きな袋を掲げて見せた。袋の大きさは二メートル四方といったところで、成人男性なら二人は入ってしまえそうだ。しかも汚水は通すがネズミは通さない…という優れた作りをしている。
「なるほど。この吸血猫の存在そのものが、ネズミ捕りに役立つというわけじゃな」
「はい。下水道のネズミを一網打尽に出来れば、当面のブーゲンビレアの餌は確保出来るし、城下町も衛生的に保たれて一石二鳥ではないかと」
「ちょ!! ちょっと待ってちょっと待って!!!」
「どうしました? ジュリアさん」
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