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「一応確認しておきたいんだけど、私が手伝うのって……ネズミを沢山捕まえることなの?」
「そうだが?」
その瞬間、ジュリアの肌という肌が鳥肌に変わる。
「え~!? ネズミ超苦手なんだけどぉ~!」
「大丈夫ですよ。ジュリアさんが直接ネズミに触れてしまうような作業は無いですし。地上から法術を使えば、下水道に降りることも無いですから」
「でもぉ……」
両腕を抱えて小刻みにブルブルと震えるジュリア。相当ネズミが苦手らしい。またも八の字になったクレイの眉を見て、ダイアンは心細そうな彼女の肩に優しく手を置いた。
「おぬしには優れた法術があるではないか。いざとなれば、あやつを捕まえた時のように、ネズミを凍らせれば良い。きっと上手くいく、大丈夫だ」
ジュリアの双眸をじっと見つめながら、ダイアンはそう励ました。その途端、彼女の瞼は暗示にかかったかのようにトロンと閉じかけ、頬は紅潮する。
「で……できるかな? 私に」
「あぁ。自信を持て」
「じゃ、じゃあ…自信が持てるおまじないを……」
「何じゃと?」
彼女はもじもじとしながら、上目遣いでダイアンを見る。急に出て来た『おまじない』という言葉にダイアンは首を捻った。
「ダイアンさんにギュッと抱き締められたら私……自信持って出来るかもしれない!」
そこまで言い切ると「キャッ!」と声をあげて、彼女は顔を覆った。この時この場で、彼女の行動の意味に気付けたのは、不幸なことに吸血猫姿のダイアンただ一人だけであった。
(あいつダイアンのこと好きなのか!? せっかく俺がモテてるのに、何で今俺はこの姿なんだよチクショー!!)
悔しさで思わず傍にあったクレイの足に思わず爪を立てる。その途端、彼からまた小さな悲鳴が上がった。
「何故それで自信が持てるのかわからぬが……別に構わないぞ」
そう言ってダイアンはジュリアの腕を引き、自らの厚い胸板に彼女を優しく包んだ。「ヒャー!!」という声にならない声と、吸血猫の「何勝手な事してんだ!!」という意味を含んだ「ギャギャギャギャー!」という鳴き声が、周囲にこだまするのだった。
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