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(あのジュリアとかいう見習い法術師も、完全に俺がマリーだと思い込んでるが……マリーは一体何を考えてるんだ? 二人を騙したままでいいのかよ)
ダイアンがこのクエストにいまいち乗り気でないのは、マリーが二人に正体を偽ったままだというのも、原因の一つだった。盗賊であるダイアンが他人に嘘をつくのは日常茶飯事だが、他人に嘘をつかされているのはどうにも気持ちが悪い。嘘をつかされていると言っても、この体ではまともに喋れないのだから、特に虚言しているというわけでもないのだが。
そんなことを考えながら歩いていると、突然目の前に通路を塞ぐ程の大きな謎の物体が出現し、吸血猫は咄嗟に歩みを止めた。モンスター本来の能力なのか、吸血猫にはこの真っ暗な下水道でも、中の様子が手に取るように見えている。がしかし、目の前の物体が何であるのかはわからなかった。とにかく黒くて、泥なのか土なのか…吸血猫の身体を上回る大きさの塊がボン! と目の前を塞いでいた。
(何だコレ……)
下水の生臭さでなるべく鼻を使わずに息をしていたが、この物体の匂いを少し嗅いでみようと、鼻から空気を吸ってみた。
(臭っせ!!!!!)
生臭さを通り越して、刺激臭とも呼べる匂いが鼻腔を襲い、慌てて両手で鼻を押さえた。そしてこの物体を迂回すべく、反対側の通路へと飛び移り、物体の横を通り抜ける。
(何だよこれ!! とんでもなく臭いぞ!?)
鼻を抑えながら改めて、その黒い塊をよく見てみると、中に白く尖った何かが、沢山含まれているのがわかった。
(何だアレ……)
どれも湾曲した針のような形をしていたが、一つだけ同じ材質の白い塊のようなものを見つけた。その塊には二つの同じ大きさの穴が並び、その下には細かく尖ったものがいくつも並んでいる。
(これ……もしかして何かの頭蓋骨じゃねーか? 何かって……この大きさだとやっぱ……ネズミ、だよな)
もしそれが正しければ、この物体は下水道にネズミが存在することを証明している。ネズミは居たのだと胸を撫で下ろすのと同時に、「じゃあこの塊は一体何なのか?」という別の疑問が湧き上がってきた。注意深く見てみると、この塊には同じようなネズミらしき白骨が、沢山含まれている。
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