3rd Quest:モンスターの餌を確保せよ

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(おいおい……ネズミの白骨死体を含んでて、メチャクチャ臭い塊って言ったらよぅ……)  その時、ダイアンの後ろから「グルルルルル……」という獣が喉を鳴らすような音が聞こえた。続いてバリーン!! と何かが割れる音と、ドゴゴゴゴ……と何かが雪崩れ込む音が響く。溝を流れる下水が見る見るうちに水位を上げ、おびただしい数の蠢く何かの気配が近づくのを感じた。  吸血猫(ダイアン)は下水口へ向かって全速力で駆け出す。下水は既に、溝からはみ出るほど水位を上げていたが、何もダイアンはこの下水に巻き込まれるのを恐れているわけではない。この下水と共にやってくる、大量の蠢く何かでもない。その奥の闇で怪しく唸る、両の眼を光らせた何者かの気配を察知したからだった。 *  フラウ城の南に広がる城下町の中心を、東西に流れるメインの下水道。その地上は、ひっそりとした街の裏通りになっていた。  ジュリアが一つ目のマンホールの蓋を開けた時、暗くてよく見えないながらも泥棒猫(ダイアン)が通過するのを確認し、ことは順調に運ぶと思われたが、二つ目のマンホールを開けた瞬間、ゴオオオオ…という轟音と共に、大量の小動物が蠢く気配を察知し、目に入る情報よりも早く、彼女の体中を鳥肌が駆け抜けた。 「何!? 何なのコレ……」  中は暗すぎて確認は出来なかったが、よく耳を澄ますと水音に紛れて「チューチュー」という鳴き声が聴こえる。クレイには、『ちゃんとマリーさんが通過したかどうか、こことここで確認をしてください』と地図を見ながら説明されたが、そんなことは一瞬で吹き飛ばす程の悪寒が、ジュリアにマンホールの蓋を反射的に閉めさせた。 (ネズミを捕まえる為なんだから……これでいいんだよね? でも何だろう……この嫌な予感は)  ジュリアは暫くその場にへたり込んだが、急に襲ってきた胸騒ぎが彼女を下水口へと走らせた。
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