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フラウ城の正面に高くそびえる鉄格子の門。三階建ての高さを誇るその正門のすぐ脇に、城の者が出入りする為の小さい扉があり、その両脇には二人の衛兵が槍を抱えて立っている。
「ここから城へ入れるのか?」
どちらに訊くともなく、二人の衛兵が守るその扉へ一人の男が近づく。衛兵の一人は矛先を男に向けながら、「何者だ貴様は?」と訊ねた。
「知り合いの学者に用があってな。城の中へ入れて貰おう」
堂々と言ってのける怪しい男に、衛兵らは顔を見合わせてクスリと笑った。
「どこの誰かもわからん者を城に入れるわけが無いだろう? しかもお前のような薄汚い冒険者のなりをした男を」
衛兵達の嘲笑に、男は「ふむ」と感嘆の声を漏らす。
(さすが盗賊だな。胡散臭さを感じるのはわしだけではないということか)
借りて来た今の姿では城へ入れないのを納得した彼女は、素直に宿へ戻ろうと踵を返したその時、
「あれ? そこにいるのはダイアンさんじゃないですか?」
そう声をかけられ振り向くと、二度のクエストを共にしたクレイが脇道からやって来るのが見えた。朝日の光を浴びて、更に爽やかさを増した彼の姿に、中身がマリーであるダイアンの心の臓は、思わずキュンとときめく。
「良いところに来た。丁度クレイに会いに来たところだ」
「僕に……ですか?」
「あぁ。わし……マリーの体であるモンスターについて、詳しく訊きたくてな」
「あぁ! その件ですね!? 同僚のモンスター学者には、既に話を通してあります。早速ご案内しますよ」
そう言ってクレイは先に立って歩き出した。後に続くダイアンの中身が、マリーだとは気づかずに。
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