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カツンカツンと靴音を鳴らしながら、天井のやたら高い廊下を進む。クレイが口添えをしてくれたお陰で、門番達は先程とは打って変わり、あっさりと城内へダイアンを通した。
クレイの後ろを歩きながら、目を皿のようにして城内をキョロキョロと見回す。壁や床は高い技術で加工された高級な石造りで、天井には神話を象っているのか、見事なレリーフまで施されていた。
「城に入るのは初めてですか?」
「あ? あぁ…」
城も何も…と、ダイアンは自嘲気味に口元を緩ませる。この街を訪れるまでずっと、森の中で魔法の修行をしていたのだ。もっと言えば、物心つく前からずっと森から出ていないので、城だけではなく見る物全てが新鮮なのだ。
「まさかこんなに早く城へやってくるとは、思ってもいませんでした。実は今夜辺り、一度プランタンへは行こうと思ってたんですが」
「そうだったのか」
「ええ。お二人には早く同僚と会わせたくて。でもやっぱりダイアンさんは……いち早くマリーさんを元の姿に戻してあげたいですよね?」
「え!?」
思わず驚いてしまったダイアンを、クレイは不思議そうな目で見つめる。
(そうだ……今はマリーではなくダイアンだったな)
「ま、まぁな」
「ダイアンさんも……マリーさんのこと、愛してるんですね」
「なっ!?」
思わずダイアンの口はパクパクと慌てた。今何か、サラッと重大な発言を聞いたような……
(今クレイは、「ダイアンさんも」と言わなかったか?)
「僕も婚約者がモンスターの姿になってしまったら、今のダイアンさんのように、一刻も早く彼女を元に戻す為に動くと思ったので……」
少し照れたようにはにかみながら、すぐにそう付け加える。途端にマリーの……いや、ダイアンの顔は渋くなった。
(そういう意味の『も』か……紛らわしい)
「僕も愛する人がいるので、ダイアンさんの焦る気持ちはよくわかるんです」
「わからんでもよい」
「え? 今何て?」
「何でもない」
「そうですか? あぁ、早く同僚に会わせたいのは山々だったんですが、実はまだ色よい返事は貰えてなくて……」
「色よい返事?」
「ええ。実は彼、ちょっと問題があって……まぁ、会えばわかると思いますが」
二人の進む廊下の先には、地下へと降りる階段が続いていた――
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