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慌てているダイアンとは裏腹に、マリーは目の前のテキーラ皿をひと舐めして、「知らん」と鳴いた。付け加えてマリーの知っている魔法使いは、自分と自分に魔法を教えた師匠だけだと説明する。そしてその師匠は既に、この世にはいないとも。
「じゃあそいつ誰なんだよ……」
「相手が人間なら、グズマニアの生息地へ行っても見つけられないかもしれない…。でも人間がグズマニアの姿をしていたってことは、血を吸ったグズマニアも存在していることになる」
「そうか! マリーの体は見つけられないが、マリーの血を吸った犯人の体は見つけられるかもしれないってことだな!? そしてそいつの正体がわかれば、そいつがどこへ行ったのかわかるかもしれないってことだ!」
既にマリーの体は見つかったも同然だと言わんばかりに、ダイアンは有頂天で手元のウィスキーをぐびりと流し込んだ。しかし楽観的なダイアンとは対照的に、マリーは押し黙ったままだ。
(そんなに上手くいくかのう……)
「とりあえず、そのグズマニアの生息地ってやつを教えてくれよ。そこへ行って変な言葉を喋る人間がいなければ、その周辺の人里を探すぜ」
「あぁ、それがいいだろうね」
「……」
「……」
「っておい! お前が教えてくれるの待ってんだけど!?」
ダイアンが思わず立ち上がってツッコむと、パフィは急にマスターから出された水をゴクゴクと一気飲みし、「ふ~」と深く息を吐き出した。そして…
「ボクも付いて行く」
一瞬、店内の時間が止まったかのように静まり返った。が次の瞬間、ダイアンとマリーの口から、ウィスキーとテキーラが勢いよく噴出す。
「はぁ!? 今、何つった!?」
「ボクも付いて行くと」
「ちょっと待て! 何勝手に決めてんだ!?」
「ボクはモンスター学者だ。ボクの知識は君達の旅に役立つ自信がある。それに吸血猫さんの言葉もわかるしね」
「むっ……。だが、いざという時の戦闘の方はどうなんだよ? お前を守って戦うなんてまっぴらだぜ?」
両手でお手上げポーズを決めるダイアンに対し、パフィはジャケットの内側に手を入れ、茶色い毛玉を取り出した。
「おい! バカ!! 店に何て奴連れて来てんだ!? 危ねぇじゃねーか!!」
仕込みボウガンを戦闘態勢にして、パフィの持つ毛玉に向ける。何故ならそこには、昼間大暴れしてパフィを国外追放にまで追い込んだ元凶、ブーゲンビレアがいたからだ。
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