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殴られた男は暫く痛みの引かない頬を摩っていたが、「もう来るかよっ!クソが!!」と捨て台詞を吐き、逃げるように去って行った。
「はぁ~…。店開く前から今日は散々だな!? 畜生め!」
そう言って男の逃げ去った道に向かってペッ!! と唾を吐き、店内へ戻ろうとした店主だが、店先で呆然と立ち尽くしている少女の存在に気がつき、歩みを止めた。
「ジュリア=プリムラ!? お前また懲りずに来たのか……」
「あ、当たり前でしょ!? まだ納得いってないもん!」
ジュリアと呼ばれた少女は、持っていたかごを店主に突き付ける。かごの中身を見て、店主は毎度の溜息をついた。
「だからいつも言ってんだろ? 『法術学校卒業してから来い』って。困るんだよ、お前みたいなのが品物卸すと。見てただろ? さっきの。自称法術師が後を絶たないんだよ」
「それは同情しないでもないけど……私にも事情があるんだもん。お金が無いと授業料が払えないの! そしたら卒業なんか夢のまた夢なの!!」
先程の男は学生ではなかったが、ジュリアは法術学校在学中の生徒――れっきとした法術師見習いである。ジュリアの通う法術学校はフラウ王国立の教育機関だが、授業料は一般家庭に於いて安くはない。そのせいか、才能のある庶民出の生徒には苦学生が多かった。
「そりゃ可哀想だがな…こっちにだって事情ってもんが……」
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