貧乏な法術師見習い

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 困り果てた店主へ追い打ちをかけるように、ジュリアは先程自称法術師を追い払ったコンロを勝手に点火し、自分の持ってきたミトンをその火にかけた。  1・2・3・4・5・6・7……  ミトンはいつまでも形を保ち続け、一向に燃える気配は無い。 「いや、わかってんだよ。ジュリアの法術が優れてるってことは。でもそういうことじゃなくてだな……」 「何で!? 粗悪品じゃないならいいじゃん!! 買ってよ!」 「買ってもいいけどもだな……お前の言い値にゃならんぞ? この前と同じで、一つ百ゴールドだ。百均だ百均!」 「何でよ!? 国の法術師が凍化法術で生成した糸で編まれた法術ミトンは、最低でも二千ゴールドはするのが相場でしょ!? この前なんかその糸で作られた袋で、国の学者さんが熱々のマグマ鉱石を持ち帰ったって、ニュースになったんだから! 知らないの!? 私はまだ法術師見習いだけど、凍化法術については既に修了してるの! 凍化法術だけなら正式な法術師と変わらないんだからね!?」 「そりゃ何度も聞いたから耳にタコだよ、ジュリア。だからってな? 正式な法術師じゃない奴が作った物を同じように売れば、俺の店の信用がだな……」 「そんなの言わなきゃバレないでしょ?」  店主は頭を抱えた。その発想は、先程捨て台詞を吐いて逃げ去っていった自称法術師と同じである。法術道具は見た目で優劣の判断がつかない為、粗悪品の流通が多い。だからこそこの店は『(正式な)法術師の作った法術道具』を売り文句とポリシーにしているのだ。 「とにかく! 百均でなきゃお前さんの商品は買い取らねーんだよ。それが嫌なら帰れ!」  そう怒鳴った店主は、先程の男と同じようにジュリアを店の外へと突き飛ばした。
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