人間嫌いな怪物《モンスター》学者

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人間嫌いな怪物《モンスター》学者

 城の地下は一層薄暗く、狭くて長い廊下が真っ直ぐに伸びていた。その右側の壁だけを、同じような木の扉が等間隔で並んでいる。 「ここが僕ら学者の研究室です」  後ろに続くダイアン(マリー)に、クレイはそう説明した。 「ちなみにこの一番手前の部屋が鉱物研究室――つまり僕の部屋で、その隣は植物研究室」 「あぁ…そう言えば死の島へ行った時、植物学者の話をしていたな」 「ダイアンさん、僕の話覚えていてくれたんですか!? いやぁ…嬉しいなぁ」  屈託の無い笑顔でクレイは振り返る。 (それはそうだ。クレイの話は一言一句忘れてはおらぬ)  そう思いながらもダイアン(マリー)の瞳には、クレイの左手薬指に輝く指輪が映っていた。その指輪には、彼が研究で見つけた七色に輝く虹色の鉱石が埋め込まれており、この薄暗い廊下でもキラリとよく光っている。これと同じデザインの指輪を、彼の婚約者も嵌めている。 「あの時は……彼の研究のおかげで九死に一生を得たと言っても過言ではなかったですね」 「それはそうかもしれぬが……あの時その研究を思い出したクレイのおかげとも言えよう」 「そ、そうですかね……アハハ。何だか今日のダイアンさんは調子が狂うなぁ……口調がマリーさんみたいですよ?」  途端にダイアン(マリー)はコホンコホンと乾いた咳ばらいをした。二人の行く地下廊下は壁に突き当たり、右側に並ぶ最後の扉をクレイがノックする。 「パフィ、いるかい? クレイだ」  暫く耳を澄ますが、何の反応も得られない。もう一度だけノックを繰り返し、再び様子を窺うが… 「いないようだな……」 「いや、入って欲しくない時は反応があるんです、彼。何も反応が無いのは、入っていいのかも」 (何だそれは)  そんな違和感を他所に、クレイがドアノブを回すと扉は呆気なく開いた。部屋の奥に向かって再度「パフィ、入るよ」と声をかけ、二人は静かに入室する。
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