絵美子Ⅰ

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〈北海道○○高校の夏月絵美子さん、広島○○学院・・・〉自分の名前が呼ばれたところで絵美子はハッと我に返った。辺りを見回すと学校のみんなが自分に声援を送ってくれていた。今度はみんなの声がはっきりと聞こえた。手足を軽く振ってみる。重さはない。 身体が一気に軽くなった。 (・・・大丈夫、9分30秒はきれる)先ほどとは打って変わって頭の中はすっきりしていた。    絵美子は3周目まではトップ集団の6人に何とか食らいついていた。しかし、後半に差し掛かったところで手足に異常な重さを感じるようになった。 (・・・くそ)昨日全く寝れなかった影響に違いない。絵美子は自分の不甲斐なさに思わず舌打ちした。その時トップの選手がギアを上げた。ぐんぐんと他を突き放す。絵美子は焦った。 (・・・負けて、たまるか)何とか食らいつこうとギアを上げるが、追いつけない。 絵美子だけが何とかその選手に食らいついていたが、まだ1周半は残っている状態で絵美子の身体は限界を迎えていた。 (辛いのは・・相手も一緒・・・)と絵美子が空になった気力をさらに振り絞ろうとした時、その選手は一瞬チラッと絵美子の位置を確認し、信じられないスピードでスパートを仕掛けた。  
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