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ようやく雨が上がった日。わたしはおばあちゃんとの約束を叶えるためにねねのさんぽを自分からするよとお母さんに言った。ひとりだから遠くはダメよ。というお母さんの言葉に頷くけれど、おばあちゃんの家が少し遠いのは内緒。ねねと一緒におばあちゃんのところへ駆けていく。きっとおばあちゃんは喜んでくれる。ロボット犬でさえあんなに可愛がっているのだもの。わたしが走り出さなくてもねねは久しぶりの散歩に飛び上がって喜んで、走り出した。息を切らしながらもおばあちゃんの家へと到着する。でも何時もと様子が違った。おばあちゃんひとりで暮らしているはずの小さな家にたくさんの黒い服の大人がいる。なんだか不気味でわたしは家の裏にまわってこっそりと庭に入った。縁側から見える部屋もたくさんの黒服の大人が溢れて、お線香の匂いがした。黒服の人が砂を人差し指でつまんでお辞儀をしてまた落として。よく分か
らないことをしている。ここはおばあちゃんの家なのに、どうしてこんなことをしてるの?おばあちゃんは何処?きょろきょろと目を動かして黒服のなかにおばあちゃんが居ないかを探す。でも見つからない。この人たちが隠してしまったのかもしれない、悪い人たちかもしれない。警察に言った方がいいのかな。
「こんにちは。佐々木さんに会いに来たの?」
わたしに気づいた黒服の女の人が話しかけてきた。
「ささきさん?おばあちゃんに会いに来たの。ここにひとりで住んでいたおばあちゃんよ。ねねを連れてきてあげるって約束したの」
ねねのリードを強く握って話しかけてきた黒服の女の人に言う。
「…そうだったの。佐々木さん、おばあちゃんは、長い眠りについてしまったの。挨拶してあげて」
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