救い

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 翌朝、貴之は何事もなかったように起きてきて、コーヒーを飲むだけで家を出ていった。  「俺、しばらく忘年会続くから。綾んとこは忘年会とかないの? あるんだったら遠慮なく行ってきなよ」 「うん……」  交わした言葉はこれだけ。昨夜のわたしの話なんて、まるでなかっかのようだ。  わたしもコーヒーだけを飲み、渇いた家を出る。晴れてはいるけど、冷たい風が身を叩く朝。あまりの冷たさに鼻がすんっとする。  わたしは出勤の人々に混ざりバス停に向かう。  気分転換にもならないだろうけど、高山さんの会社の忘年会にでも出てみようかしら。たまに外で飲むのもいいかも。そんなことを考えながら、俯きがちに歩いた。
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