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高山さんに参加の旨を告げると、本当ですかと返ってきた声の大きさに、電話を少し耳から離す。
「では、当社からは青山とわたしの二名の参加でお願いいたします」
「もう、堅っ苦しいなあ。承知しましたよ」
「では、失礼します」
電話を切ると、少し可笑しくなった。それにしても、いつも元気な人だ。
師走の忙しさに追われながらも、忘年会当日の夜を迎えた。
開始は六時半。わたしと青山課長は、指定された駅前の『炭火焼き 長閑』に十分前に着くと、この寒い中コートも着ないで高山さんが表で待っていた。
「青山課長、佐藤さん、今日はわざわざありがとうございます」
そう言って、深々と頭を下げる。
「こちらこそ、お招きありがとうございます。今夜はよろしくお願いします」
青山課長の言葉に、高山さんは、どうぞこちらですとわたし達を店内に案内した。
先を歩く高山さんに聞こえないように、小声で青山課長が話しかけてくる。
「ああいうところが、人を引き付けるんだろうな。今時にしては古いタイプかもしれないが、やられた方は気持ちいい。まあ、それも計算のうちかもね」
そして、呟くように付け加えた。
「人たらしだな。あれはモテるだろうな」
そうかもしれないと、わたしも心の中で同意した。
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