楽しき日々

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拓海が帰ろうとすると、友里が気を利かせたのかレジ前で拓海に声を掛けた。 「もう栞里ちゃんも上がりだから、駅まで送って行ってもらえる?」 「はい。もちろん」 にこやかに会話をする2人を栞里だけがおたおたして見ていた。 「栞里ちゃん早く帰り支度してきて」 友里の言葉に、栞里は頷いて足早に荷物を取ると拓海と店の外に出た。 「拓海さん……こないだは本当にすみませんでした!」 店を出るなり頭を下げた栞里に拓海は驚いて栞里を見た。 「なんのこと?」 「こないだ、ご迷惑を掛けて……」 「全然だよ。酔っぱらった栞里ちゃんもかわいかったよ。でもあんまり飲みすぎない方がいいかもね」 クスクス笑って言った拓海に栞里は小さく頷いた。 「あんな風になるとは知らなかったんです」 「別に、なにか迷惑をかけられたとかないから大丈夫だよ。ただ多少危なっかしいなって思ったけど。大学とかで飲みすぎると男の子に連れていかれちゃうよ?」 少しふざけたように拓海は言った。 「そんな……初めて酔っぱらいましたよ。でもこれからは気を付けます」 「そうしてね」 ふんわりといつも通りの笑顔を向けられ栞里はやっとホッと胸をなでおろした。 「今日これからちょっと寄る所があって、駅までしか送れないけど大丈夫?」 「あっ、そんなのもちろんです」 (デートとかかな……) 胸がチクンと痛んだ。そんな自分の気持ちを隠すように栞里はニコッと笑うと拓海に別れを告げた。
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