楽しき日々

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それから何週間が過ぎて行った。 「栞里ちゃん、先に上がっていいわよ」 少し前から閉店間際、拓海しかいなくなると、気を回した友里が栞里に声を掛ける様になった。 初めて拓海の前の席に座った日、栞里はなんかバツが悪く初めは戸惑っていた。 しかし、友里が強引に拓海の前にコーヒーを置きニヤッと笑ったのを見て諦めたようにしぶしぶ座った。 そんな栞里を拓海もクスクス笑って見ていた。 最近は、当たり前の様にマスター夫婦の片付けが終わるまで栞里は拓海と窓際の席でコーヒーを飲み、たまにマスターの好意で残ったサンドイッチやケーキを食べた。 「なあ、これってさ。」 「うん?」 拓海は栞里の前に雑誌を置くとトントンと指を指した。 「あー!天国!!」 栞里は少し大きな声を出して雑誌を手に取るとジッと見た。 「これだろ?栞里ちゃんが言っていたの?」 これが本来の拓海の話し方だとこの頃から気づいた。はじめの様な気を使った話し方の中にもふと砕けた話し方になる。栞里に少しは気を許してくれたようで栞里は嬉しかった。
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