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「さあ、そろそろ閉店よ」
友里の声に2人も立ち上がった。
「ありがとうございました」
栞里が裏からカバンとコートを取って戻ると、拓海が友里とマスターに笑顔を向けていた。
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
笑顔で言った友里さんとマスターに栞里も頭を下げた。
「行こうか」
「はい」
2人は軽く友里達に手を振ると店の外に出た。
「まだ寒いな……」
いつものように、首元を手で押さえ拓海は言い、そしていつものように空を見上げた。
そしてそっと栞里の手をいつものように拓海は握ると自分のポケットに入れた。
「マッサージで俺の手も栞里ちゃんの手もツルツルだな」ポケットの中で栞里の手を撫でると拓海は言った。
(本当にこういう事を素でやるんだから……拓海さんって)
ため息をつくと、栞里の息は白く夜の空気に消えた。
「ねえ、栞里ちゃん、今度の土曜日どこか行こうか?」
その言葉に栞里は少し驚いたが「……はい」と答えると温かく繋がれた手に少し力を込めた。
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