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送ると言った拓海に、なんとなく一人でもう少しブラブラしたい気分だった栞里は、ちょっと本屋に寄りたいからとやんわりと断ると栞里と拓海は駅で別れた。
まだ息が白い。栞里はポケットに手を入れてカバンからイヤホンを出すとそっと耳に当てた。
最近よく聞いている洋楽。歌詞はあまりよくわからないが、メロディーと切ないアレンジが気に言っていた。ピアノのアレンジが効果的に入っており、男性ボーカルの少し高めの甘い声も好きだった。
いつもの古本屋により、何冊か卒論に使えそうな本を見繕い買うと、なぜか少し切ない気持ちのまま、電車の窓にもたれて景色を見ながら音楽を聴いていた。
拓海から誘ってもらえた嬉しさと、なぜか解らないが少し不安な自分。そんな自分の気持ちを持て余していた。
駅を降りると、LINEが鳴った。
【きちんと家に帰ったら、連絡して】
彼氏の様に気を使ってくれる拓海に、私は彼にとっての何なのだろ?そんな事が頭をよぎる。
家のドアを開け電気をつけ、拓海に帰ったことを伝えるLINEをした。
了解。また土曜日のこと決めようと書かれた文面をじっと栞里は見た。
そこで碧唯の自分が楽しめればいいと言う言葉を思い出し、栞里は不安な気持ちを頭から追い出すと熱いシャワーを浴びた。
――恋愛って幸せと不安ってどっちか多いのかな。
「雨の降る街で君と」の中に出てきた主人公の言葉を思い出した。
(どっちが多いの?)
一人心の中で栞里は、誰ともわからず問いかけた。
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