楽しき日々

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何日かして、やっぱり一人では結論を出すことができず栞里は碧唯に相談することにした。 今日はもうブログを書くのは止め、直接碧唯へとメッセージを送る。 【碧唯ちゃん、今度またこないだの人と出かけることになったんだ。楽しければいいよね?どうして私の事を誘ってくれるのかって不安で……】 初めて自分の気持ちを素直に書くことに多少のためらいはあったが、栞里は意を決すると送信ボタンを押した。 (あれ?) いつもはすぐに来る返信がなかなか今日は来ないことが、さらに栞里の心を不安にさせる。 栞里は寂しくなり枕を抱きしめるとベッドに横になった。 今日は、マスターの特製オムライスを食べた為食事の準備もない。 今の状況をただ、能天気に「楽しい」「幸せ」そんな風に浮かれて楽しめる性格ならどれだけよかったのだろう。 自分のこの面倒くさい性格のせいでいろいろマイナスに事を考え、複雑にしていることは解っていた。 ただ出会って、友人になり、拓海に少しずつ惹かれて行っている。それだけの事を認めることができない自分の偏屈さに嫌気がした。 それなのに、拓海に見え隠れする今までの女の人の影が気になって仕方がない。そんな浅ましい妄想が肥大し、嫉妬にも似た感情を感じ、栞里は慌てて頭を軽く振ると、シャワーをぱっと浴びた。 ミネラルウォーターのキャップを開けて半分ぐらい飲み、碧唯からの返信が無い事を確認するとベッドに潜り込んだ。 (楽しい事を考えよう。拓海さんといったら楽しい所……) そうは思うのに、なぜ自分に声を掛けたの?今までの彼女とはどこへ行ったの?自分の経験の無さをつまらなく思っていない?そんな感情が渦を巻き栞里の心を侵食して行った。目を瞑っても頭の中からその事が消えることはなかった。 栞里は眠るのを諦めると、「雨の降る街で君と」を本棚から取ると、もう一度初めから読み始めた。
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