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予定を合わせられたのは、翌週の土曜日だった。
栞里は待ち合わせの古本屋に30分前に着き、本を読んでいた。
そんな栞里の行動はお見通しのようで、約束の15分前に拓海も店内へ入ると、栞里の横に立つと本を手に取った。
真剣に読み更けている栞里に声を掛けるのは止めて拓海も本に目を落とした。
ふうーと大きな息を吐く音がして、拓海は栞里に目をやった。
「終わった??」
「え?」
拓海のその言葉に初めて拓海が隣にいた事を知った栞里は、
「嫌だ!声を掛けてくれればいいのに……」
「真剣だったから。栞里ちゃんの百面相見れたし楽しかったよ」
クックッと喉を鳴らして笑った拓海を軽く栞里は睨んだ。
「悪趣味ですよ!拓海さん」
パタンと音を立てて栞里は本を閉じると本棚に戻した。
「何か買うの?」
「大丈夫です。読み終わっちゃやいました」
栞里はペロっと舌を出すとニコリと笑った。
「じゃあ行こうか?俺あんまり浅草詳しくないよ?」
「私の行きたい所でいいんですか?」
「いいよ。俺もなんだか楽しみになっていたし」
そんな会話をしながら、2人はまだまだ寒い街を歩き出した。
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