学食と現実

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「栞里はさ、教員免許の講義も取ってたよね。どうするの?」 「どうしよう……。あゆみは?」 「とりあえず、手堅く商社やメーカーの事務狙おうかな」 あゆみは黒板に書かれた今日のランチメニューを見ながら言った。 「そっか……。どうしようかな。本が好きとかって仕事にならないよね……」 2人は日替わりランチを注文し、お盆に乗せ会計を済ますと足取り重く窓際に座った。 「なんかさ、今までの結構気楽な学生生活が懐かしいね」 あゆみはご飯を口に入れるとため息をついた。 口に出したことはないが、栞里は昔から学校の先生に憧れていた。 大学も教育学部も受験したが、失敗した。浪人するのも親に負担がかかると合格した今の学部にいる。 しかし諦めることもできず、教員資格に必要な単位は取得していた。 でも、この自分の性格で教師が勤まるのだろうか、こんなネガティブな自分が子供たちに本気で向き合えるのだろうか。 そんな不安から大学に入学してから友人や親にも声に出して言った事は一度もなかった。
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