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カフェの片隅で
冬の夜は長い。18時を過ぎたばかりの駅前はすでに空は暗く、街の街灯が灯る。その下を寒そうに帰路につく人が慌ただしく行き来している。
栞里はカウンターの中から窓の外のそんな景色を見ていた。
そんな景色から目を移し、店内に1人だけとなったその彼をチラッと見ると、コートを手に取り席を立つところだった。
その様子を見て栞里も移動する。
「すみません。あの……」
栞里は呼びかけられたのが自分だとわかると、目の前にいるその人をそっと見た。
少し恥ずかしそうに声を掛けてきたその男の人が、なぜか可愛らしく見え栞里は微笑んで返事をした。
「はい?」
自分では微笑んだつもりだったが、相手にどう映ったかは定かではない。
「あの……。僕とお友達に……」
そう言うとその男性はペコリと頭を下げた。
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