686人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
楽しき日々
「栞里ちゃん」
不意に後ろから声を掛けられ栞里は振り返った。
「拓海さん…。お仕事帰りですか?」
「うん。栞里ちゃんは?バイト帰り?」
「はい」
最寄駅が一緒だが、帰りが一緒になったのは初めてで栞里は拓海をそっと見上げた。
「どうした?」
「初めて帰りに会ったなって思って」
拓海が無言になったのを疑問に思い、栞里は不安な面持ちで15㎝は高いその顔を見上げた。
「ごめん。俺は何度か栞里ちゃん見た事あるんだ。実は」
拓海は少しバツの悪そうな顔をすると栞里を顔を向けた。
「え?」
「まだ声を掛ける前だったから、もちろんあの子だ……ってぐらいだけどね」
栞里はその言葉に顔が熱くなるのを感じた。
「私、変な顔とかしてなかったですか?」
慌てて言った栞里の声に、拓海はクックッと喉を鳴らした。
「してないよ。それにそんなにジッとストーカーみたいに見てないから」
「ストーカーなんて思ってないですけど……。なんか恥ずかしいじゃないですか」
少し睨むように言った栞里に拓海は『ごめん、ごめん』とポンと頭を叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!