第三章 「狐の涙」

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 えっ、頼光が消えた。どこだ、どこへいった。  気づくと鬼猫の目の前に移動していた。頼光はすでに攻撃態勢だ。日本刀の刃がギラリと鈍く光り鬼猫の顎を捉えようとしていた。  ダメだ。やられる。  大和は身体が強張り一歩も動くことができなかった。だが聞こえてきたのは鬼猫の呻き声ではなく金属音だった。  大黒様が頼光の持つ日本刀の刃を小さな剣で受け止めていた。あの小さな身体でどこにそんな力があるのだろうかと目を疑った。刹那、頼光は吹き飛ばされていた。いや、違う。頼光は斬られている。大黒様の剣に重なるように何かが見えた気がした。それが何かはわからないが、剣で何もない空間を切り裂いていたようだ。その狭間に頼光は吸い込まれていく。  大黒様の体型から想像でいない動きだ。頼光の速さを大黒様は上回っているってことなのか。凄過ぎる。  あっけなく頼光はあっち側へと消え去ってしまった。 「よし、百目鬼行くぞ。んっ、百目鬼、どこだ」  あれ、百目鬼の姿がない。どさくさに紛れて逃げたのか。 「鬼猫、任せておけ。ほれ、ほれ、いくぞ。ほいほいほい」  恵比須様が釣り竿を振ると針のついた釣り糸が飛んでいく。糸が途中で消えている。こんなんで捕まえられるのだろうか。それよりも今の掛け声はなんだ。 「いてぇよ。わかったから、案内するから」  百目鬼が突然どこからともなく現れた。恵比寿様の釣り竿は魔法の釣り竿なのか。そう思ったのだが必ずしも万能とはいえないのかもしれない。百目鬼だけではなく河童に天狗……。他にも妖怪が釣られてしまっている。なんて妖怪だろう。 「アマビエ、小豆洗い、小玉鼠だ」  鬼猫はそう教えてくれた。
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