第三章 「狐の涙」

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 燃やしてしまえばいい。みんな燃えちゃえばいい。  そうすればすべて終わる。生きていたってしかたがない。燃やしてしまえば狐もここにはいられないだろう。火で狐の化け物を殺せるかわからないけど、それしか思いつかない。  徹は数本の蝋燭を社にまとめておくとライターで火をつけた。ボワッと炎が立ち昇る。そこへポケットに入れた蝋燭も投げ入れていった。社だけではなく周りにも火をつけた蝋燭を投げていく。 「おまえ、何をしている。やめろ」  社にはすでに火が燃え移っていた。鳥居も燃えはじめている。  狐は火を消しにかかるが、徹はポケットから蝋燭を取り出して火をつけて四方八方に投げつけていった。 「貴様、いい加減にしろ。死にたいのか」 「脅したって無駄だよ。僕は死ぬつもりだから」  徹は睨みつける狐に怯みつつも睨み返して火をつけた蝋燭を投げつけた。  狐は蝋燭を叩き落として近づいてくる。 「おまえもやっぱり裏切るのだな。望み通り、死ね」  狐は毛を逆立てて鋭い爪をニュッと出すとニヤリとして近づいてきた。これで終わりだ。地獄行きかもしれない。それくらい酷いことをしてしまった。しかたがない。  狐の真っ赤な血のような瞳がギラリと光り鋭い爪が腹部に突き刺さる。  うぅっ。  徹は呻き声をあげて口から血を吐いた。 「パパ、ママ、ごめんね」 「くそっ、心臓を貫いてやろうと思ったのに邪魔するとは。そこにいるのはわかっているぞ龍の出来損ないが」  徹は痛みに耐えながら狐の声に耳を傾けていた。龍ってなに。そんなのがいるの。ああ、ダメだ。お腹から血がこんなに……。
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