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「鬼猫、あそこ」
百目鬼の指差す先に火の手が映る。
「大和、火事だ。早く通報しろ。皆、急ぐぞ。あそこから凄まじい妖気を感じる」
大和は頷き、すぐに一一九番通報をした。消防車がすぐに到着するだろう。
走る鬼猫たちを追って再び愛莉の手を取り大和は駆け出した。
大和は愛莉の手に触れた瞬間、何かの映像が頭に浮かんだ気がしたがすぐに朧げになって薄れてしまった。今のはなんだったのだろう。素戔嗚尊だったろうか。八岐大蛇らしき存在もあった。それに綺麗な女性がいた。そう思いつつ火事の家へと急いだ。
大黒様は鬼猫の背に飛び乗って揺られている。チラッとだけ大黒様と目が合ったがすぐに前を向いてしまった。何か言いたげだったように思えたが気のせいだろうか。
「あっ」
愛莉の声がした瞬間、ガシャンと耳障りな音にビクリとなり足を止めた。地面に鏡が落ちて割れていた。
「神鏡が……」
鬼猫も立ち止まり振り返る。
「おや、櫛があるのぉ」
恵比須様の呑気そうな声を耳にして落ちた鏡を見遣ると確かに割れた鏡の中から櫛が覗いていた。鬼猫も百目鬼も覗き込んでいる。
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