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徹はなぜか自分の姿を目にしていた。
これって幽体離脱ってやつだろうか。死んじゃったのだろうか。病院に搬送されていく自分がそこにいる。パパとママもいる。
「大丈夫だ、まだ死んではいない。必ず救ってやる」
徹は微かにそんな声を耳にした。あたりを見回すと搬送される自分と並走する小さな蛇をみつけた。いや、蛇ではない。足がある。龍みたいだ。龍って本当にいたのか。けど、なんであんなに小さいのだろう。
「龍神様だ。あのお方のいた社はもう崩れてなくなってしまったというのに、いまだに荒巻家をお守りしてくださっている。感謝しなくてはいけないよ」
「誰なの」
「おまえのじいさんのじいさんのそのまたじいさんだ」
「えっ、なにそれ。よくわかんないよ」
「まあよい。龍神様に感謝することを忘れるでないぞ」
そんな言葉を残しておじいさんは消えてしまった。
徹は首を傾げて搬送される自分に再び目を向けた。
あれ、なんだろう。淡く光る糸のようなものが足元にあった。その人は搬送中の自分と繋がっている。これって……。徹は糸を手に取り手繰り寄せようとした。その瞬間、自分の身体の中へと引き戻されていき痛みが襲ってきた。
「パパ、ママ」
徹は痛みに耐えられずにそのまま意識を失ってしまった。
どれだけ眠っていたのだろう。腹の傷の痛みはまだあるものの少し和らいでいる気がした。なんとなく頭がボウッとする。
ここは……。そうか病院か。
パパとママはどうしただろうか。右を見ても左を見てもどこにもいない。
「僕は助かったのか」
徹はぼそりと独り言を呟き天井を眺めた。よく覚えていないけど、不思議なことがあった気がする。何がどうしてしまったのだろう。確か……。そうだ、火をつけた。もう死んでもいいと思っていた。けど、なんだか急に引っ張られていつの間にか外にいて変な人達がいて……。
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