第一章 「鬼猫来る」

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 大和はいつものコンビニに向かい、モチモチ饅頭を自分のぶんを入れて三個買った。なんとなく目にしたチーズパンと海老煎餅とシャキシャキのレタスとハムのサンドイッチまで買ってしまった。  完全な衝動買いだ。  コンビニの袋を見つつ、まあいいかと思い直す。食べたいから買った。食べれば腹が満たされる。つまり、無駄じゃない。それだけだ。すでにチーズパンを頬張っている。  美味い。  あっという間に完食してしまった。物足りなさを感じてサンドイッチまでパクついてしまう。レタスのシャキシャキ感はやっぱりいい。あまり野菜を食べないのだがこのサンドイッチは食べたくなるから不思議だ。  コンビニを称賛したい気分だ。  それはそうと食い過ぎだろう。まあ、そんなこと気にするな。袋の中を覗き込みニンマリする。猪田家に着いたら、モチモチ饅頭も食べよう。  そんなことを続けていたら絶対に太るって思うだろう。気をつけなきゃデブ決定だと思っているだろう。だが自分は違う。食欲に負けてしまう自分だがまったく太っていない。不思議だけど本当だ。  なぜだかわからないけど。  部活も入っていないし、運動らしい運動もしていない。いったい自分はどこでエネルギーを消費しているのだろう。 「あっ、どうもこんにちは」  通りすがりの女性に会釈されて思わず挨拶をしてしまった。けど、今のは誰だろう。最近、よく挨拶をしてくるけど誰だかわからない。  振り返ってみたものの女性の姿はなかった。  なんだ幽霊か。慣れとは恐ろしいもので幽霊を見たくらいじゃ驚くことはない。普通に幽霊は歩いているものだ。そのせいで幽霊と気づかずに挨拶してしまうことが多々ある。いいのか悪いのかよくわからないが特に問題が起きているわけではないから気にすることはない。  幽霊は怖いってイメージあるけど、生きている人とそれほど変わらない。いや、どちらかと言うと生きている人のほうが怖いかもしれない。悪霊とは出会ったことがないからそう言えるのかもしれないけど。
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